ソーニャとキエフ 第3話 喫茶マジック・マウンテン


(このページは執筆中で暫定的なものです。2025,04,13)


 私は!立川やまと!

 日本を愛する日本人クリスチャンであります!

 4月6日、日曜日!今日はそーにゃんの写真撮影のためにみんなで向洋の坂道を登っていたのですが、なんと!

 そこに十字架を背負いイエス・キリストの福音を述べ伝える女性、アリソン・パーカーさんが現れたのであります!

 十字架を背負い、苦難の坂道を歩く姿に、一目でビビッと感じ入ったのであります!


 私たちはアリソンさんと一緒に、障害者作業所を兼ねた「喫茶マジック・マウンテン」へ向かうことに…!

 ワクワクドキドキの展開から目が離せないのであります!っしゃー!




 多くの広島市民にとって向洋といえば、マツダ本社前にある向洋駅周辺を指しますが、あそこが行政上は「安芸郡府中町東青崎」であることはあまり知られていません。本来の向洋は、駅から南に向かい、青崎を経た住宅地、向洋本町、向洋中町、向洋大原町のあたりを指すのです。

 真偽は不明ですが、明治時代に駅が建設されるにあたり向洋地域の人々が多く建設に参加し、いざ駅名を決めるにあたって「俺たちが作ったんだから向洋駅にしろ」と主張して、向洋駅という名前になったとか。

 さらに洋光台団地の名で知られる(バスの行き先にも表示される)向洋新町も、昭和戦後期の高度経済成長のころに、山を切り開いて造成された新興住宅地です。このため同じ向洋地域でも、新町と山の下の方の旧市街地では、性格が大きく違っています。

 そして向洋地域のスーパーは、向洋新町の2号線バイパスに近い端っこに1軒、「フジ」グループの「ピュアークック」があるのみ。かつては「スーパーおおうち」、「アパンダ」を経て地元資本の「ユアーズ」になった店舗が青崎と大原にありました。しかしいずれも2020年代までには撤退したため、山の下の旧市街地にはスーパーが1軒もないという、ご老人にはきつい状況になっているのです。関係ないことですが、フジが合併で流通大手イオングループ入りを果たしたとき、筆者は驚天動地の思いでひっくり返りました。


 今回ソーニャたちとアリソン(とかいう十字架を背負ったけったいな女性)が向かう「喫茶マジック・マウンテン」は、向洋新町のスーパーの近くにあるということ…ということは、向洋大原の坂道からは、かなりの距離を歩くはめになるのです。なにしろ向洋新町は広大ですからね。


 そしてアリソンは十字架を背負って歩くわけですから、否が応でも好奇の目にさらされ…ソーニャたちも巻き添えを喰らうことになるのです。

 「なにあれ、変な人がいる!」

 「あの漫画の剣豪を気取ってるのかな?」

 通りかかった小学生に嘲笑われても、アリソンは確信犯ですから、何食わぬ顔で叫ぶのです。

 「イェーイ!日本の王はイエス・キリストデース!」

 「その通りデース!」


 「あー、恥ずかしー、やまとが二人に増殖した、あー嫌だ嫌だ」

 マヤの表情はどんよりしていました。

 「うわうー」(介助アプリ)「恥ずかしいよ、みんな見てるよお」

 「私は注目を浴びるのは気分悪くはないけどね!」

 「そりゃお姉ちゃんも奇人だからだアンポンタン」


 「…」

 ソーニャだけが一人うつむき、押し黙って、考え事をしながら歩いていました。

 「どうしたの、そーにゃん、さっきから顔色が悪いわよ?」

 「え、あ、…うん」

 マルヤムから声をかけられたソーニャは動揺しました。

 「みんなは、自分が愛すべき国を持ってる、宗教への信仰心もあるんだなって、思っただけ」

 「ううー?」(介助アプリ)「そーにゃん、どうしたの?」

 「ぼくはロシア人ということで…悪い人間にされた。朝鮮人ということで、ばかにされた。2分の1は日本人だけど、銀髪に緑色の目をしている、この生まれつきの姿のせいで、日本人と認めてもらえない。そしてぼくの宗教は…ロシア正教会だ。ウクライナ戦争を聖戦と呼んで正当化している、あのロシア正教会だ、ぼくがその信者だと分かれば、ぼくはさらに嫌われる」

 ソーニャは空を見上げました。

ぼくには、大切にすべき国もない、アイデンティティもない、宗教も信じられない、誇りもなにも、ないんだ。ぼくは無国籍なんだ、宇宙人なんだ」


 「そーにゃん」マヤがじっと顔を見つめているのに気づいたソーニャは、「ごめんね、みんな楽しんでるのに…暗いことを…言って」と謝りました。

 「いいんだよ、そーにゃん、いまは心の傷を癒すことに専念すればいい、そーにゃんには私たちがいるんだから」

 「うん、ありがとう」




 「マジック・マウンテンに到着デース!」

 アリソンが両手を上げて、そのまま店の扉を開いて、

 「ハロー、ミナサン!」

 入っていきました。


 (著者注…マジック・マウンテンのモデルとなる喫茶店、障害者作業所は向洋新町にはありませんのであしからず)


 「なんだかおしゃれな喫茶店だね、マヤちゃん」

 「うーん、このレトロな香り、いいね」

 福田姉妹が感心してみていました。

 「さあ、アリソン姉さまについて行きましょう!」

 と、やまとを先頭に喫茶店の中へ入っていきました。


 「いらっしゃいませー」

 と女性店長の声。



(執筆中)